【国内最速の超急速充電器】テスラのV3スーパーチャージャーはどこが違う?
記事作成:2020/12/13
皆さんおはようございます、八重さくらです!
今回は2020/12/11に開設された国内初のV3スーパーチャージャーを徹底解説します!
2020年12月11日、埼玉県川口市に新しいテスラの急速充電器である「V3スーパーチャージャー」が開設。2019年に登場してから米中を中心に海外で整備が進められてきたが、1年以上遅れてついに日本にも設置された。
本記事では旧型との比較も交えて、新しい急速充電器について徹底解説する。
1. テスラのスーパーチャージャーとは?
テスラが2012年にモデルSを発売した当時は十分な公共の急速充電器がなく、日産が全国のディーラーCHAdeMOを整備したように自力で充電インフラを整備する必要があった。その頃は既に急速充電器の規格としてCHAdeMO規格が存在していたが、テスラではユーザーの利便性を追求するためにこれを使わず、独自で「スーパーチャージャー」と呼ばれる急速充電網を整備した。
CHAdeMO(日本)やCCS(欧州)などの一般的な公共の急速充電器と異なる特筆すべき点としては、充電ポートと充電器の配置を工夫してケーブルを短くすることで女性や子どもでも楽に操作でき、車両のコネクテッド機能を活用して認証が不要で挿すだけで充電が始まるという使い勝手を実現している。
V1 やV2と呼ばれる第1世代のスーパーチャージャーは最大出力120kWで、それでも現在の国内のCHAdeMO(2020年現在でほとんど20~50kW、ごく一部が90kW)と比べるとオーバースペックとも思えたが、V3ではそれを超える250kWを実現した。
※ただし多くの場合最大出力を活かせるのは極わずかの時間のみで、出力と充電速度は比例しないので注意!
国内では今回オープンした「川口」を含めて2020年12月現在で全26箇所のスーパーチャージャーが存在し、「東京 - 東京ベイ」や「鳴門」、「名古屋 - 星ヶ丘」では1箇所に8基、ほとんどの場合4基~6基程度まとめて設置されている。1箇所に多く設置することにより充電待ちを無くしたり、待ち時間を最小限に抑えられる。
2. V3と旧型との違いは?
2020年現在、スーパーチャージャーには大きく分けて以下の3種類が存在する。
タイプ | 最大出力 | 国内の設置数 |
---|---|---|
V1 / V2 | 120kW~150kW | 21箇所/102基 |
アーバン | 72kW | 4箇所/28基 |
V3 | 250kW | 1箇所/4基 |
V1 / V2
V1およびV2は2012年に一番最初に登場したタイプで、2020年12月現在もっとも普及しているタイプ。登場時は最大120kWだったが、2019年より順次ソフトウェアアップデートにより最大150kWまで出力が向上。(一部向上していない箇所や130kWなど制限されている箇所あり)
V1とV2の最大出力は120kW~150kWだが、隣り合う2つのストールで出力を分け合うため、2台同時に充電を開始するとどちらも60kW~70kW程度しか出ない場合がある。(CHAdeMOの2本出しの様なイメージ)
アーバン
アーバンタイプはV1やV2の設置が難しい狭いスペースでも設置できるコンパクトタイプのスーパーチャージャーで、出力が最大72kWに制限される代わりに隣り合うストールの制約を受けず、いつでも最大出力で充電可能。
国内では「東京 - 東京ベイ」「名古屋 - 星ヶ丘」「京都」「広島」の4箇所がこのタイプを採用している。
V3
2019年に登場した最新型で出力が最大250kWに向上するほか、アーバンタイプと同様に隣り合うストールの制約を受けず、(バッテリーのコンディションが良ければ)いつでも250kWを出力できる。
上記画像でも分かるように見た目はV1やV2とほぼ同じだが、V2より細い水冷式のケーブルを採用することでさらに扱いやすくなった。
3. 実際に充電してみた!
ナビに登録されていない!?
実はこの「川口スーパーチャージャー」はまだテスラのナビデータに反映されておらず、ほかのスーパーチャージャーのように詳細情報や空き状況などの確認はできない。通常はナビの目的地をスーパーチャージャーに設定すると「急速充電に向けたバッテリーのプレコンディショニング」機能により冷えたバッテリーを自動的に暖めるが、(特に冬の時期は)ナビを設定できなければ最大の充電速度に到達しない可能性が高い。
そこで一度途中の「お台場スーパーチャージャー」に目的地を設定し、道中で(半ば強制的に)バッテリーを暖めながら川口スーパーチャージャーへ向かうことにした。お台場スーパーチャージャーは2020年12月まで約1年間の長期メンテナンスが行われており、その復活の確認も兼ねての寄り道だ。
いざ、充電!
バッテリーが暖まったら、いよいよ「川口スーパーチャージャー」へ。入り口にスーパーチャージャーの看板がなく少し分かりづらいが、テスカスさんのブログにて分かりやすく解説されているので、行かれる場合は参照されたし。
到着時の充電残量は約8%。最初は50kW程度から充電を開始して徐々に出力を上げ、接続してから5分ほどで最大出力の114kWに到達。このモデルX75Dの場合は150kWに対応したV2スーパーチャージャーで充電しても最大出力は114kWであり、車両性能の限界によりV2でもV3でも出力は同じとなる。(過去には最大120kW以上出ていたが、急速充電の回数が多くなると徐々に出力が低下する)
モデル3のロングレンジやパフォーマンスモデルなら出力が最大の250kWまで出るそうで、羨ましい限りだ。
※参考:テスラ『スーパーチャージャ-V3』日本初設置! 川口スーパーチャージャーで250kW超急速充電を試してきました!
30分ほどで67%まで回復して出力が60kWまで下がったため充電を終了した。30分で充電できた電力は約38kWhで、走り方にもよるが凡そ150km~250km程度走行できる分を充電できた計算となる。
費用
スーパーチャージャーで充電した場合、通常は画面上にかかった料金が表示される。ところがまだナビにスーパーチャージャーの情報が入っていないためか、充電が終わってからも画面上には以前の料金が表示されていた。
もしや「タダで充電できているのかな?」と思い、念の為ウェブからテスラアカウントでログインして確認してみたところ・・・
しっかり課金されていた!!
料金は60kW未満が20円/分、60kW以上が40円/分と他のスーパーチャージャーとほぼ同じだ。V3の場合は最大で250kWでるため、仮に最大の250kWで充電した場合、単純計算で1分あたり約4.17kW充電される。充電によるロスを考えて約4kWだとすると、1kWあたり僅か10円という計算になり、自宅の電気料金よりも安くなる人も多いのではないだろうか?
4. V3スーパーチャージャーの裏側を覗く
テスラの費用負担
今回は地主様の善意により10年間は無料で土地を使えたとはいえ、工事費用は全てテスラ持ち。噂レベルではあるものの、従来のV2スーパーチャージャーの工事費用が1箇所2,000万~3,000万円であるのに対し、今回のV3では7,000万~8,000万ほどかかっているという。
電気代についても、仮に東京電力の高圧電力であれば基本料金だけで1kWあたり1,815円となる。今回は250kWのV3スーパーチャージャーが4台なので単純計算で合計1,000kW、すなわち毎月200万円近い基本料金がかかる可能性がある。
もちろんV3スーパーチャージャーが増えてほしい気持ちはあるものの、仮に価格500万・粗利20%のモデル3に換算すると、80台販売してようやく1箇所の工事費用が賄え、毎月2台分の粗利で1箇所のスーパーチャージャーの基本料金が賄える計算となる。当然他の経費や投資もこの中から捻出する必要があると考えると、決して楽な商売ではないことがよく分かる。
送電線の通り道
どのスーパーチャージャーをみても本体からストールまでの配線は地下などに埋設されているので直接見ることはできないが、電柱からの引き込み線はたいてい見えているものである。しかし今回は周辺を見ても電柱からの引き込み線らしき電線は見当たらない。
そこで反対側を見てみると・・・
数十メートル先に電柱を発見!!
よく見るとわざわざ一度掘り返して電線を埋設した上で、再度人工芝や植木を植樹しているようだ。これだけ距離があれば近くに電柱を立てて空中から引き込む方が費用を抑えられそうだが・・・景観のために多額のお金をかけるというのは、なんともテスラらしい選択である。
5. 今後のEV充電インフラの課題と展望
前項でも触れたように、(水素ステーションより安いとは言え)EV充電インフラ整備にはとてもお金がかかるもの。そんななか日産では全国のディーラーにCHAdeMOを設置し、テスラでは世界中の販売国に2,000箇所以上(2万基近く)にスーパーチャージャーを設置。
しかし今後普及が進むことを考えると、これまでと同じ方法で自動車メーカーだけで必要数全てを整備するのは難しい。欧米のように充電インフラを専門とする民間企業や政府・行政の力も必要となる。決して簡単なことではないが、明るい兆しも見えている。
民間企業の動き
昨年これまで自動車メーカーが中心となって充電インフラを管理していた「合同会社日本充電サービス(NCS)」に代わり、電力会社が中心となる「株式会社e-Mobility Power」が誕生した。同社は今年まで目立った動きが無かったが、2020年8月に「最大出力180kWの急速充電器を250台を超える数を発注」というニュースリリースを発表。2020年11月には最初の充電器をカインズに設置し、今後は混在したPA/SAへの増設や交換が期待されている。
参考:イーモビリティパワーがABBの高出力急速充電器で電気自動車充電インフラ最新化へ
政府・行政の動き
2020年10月の菅政権の所信表明演説で「2050年のカーボン・ニュートラル実現」を宣言したことを受けて、購入の補助金を倍増するなど急速に電気自動車へ舵を切り始めた。そして政府としては「2030年代半ばからガソリン車の販売を認めない」とし、東京都としては5年前倒しで「2030年の移行を要請」している。
これまで民間企業は「儲かるかどうか分からない」EVインフラに対して大きな投資が厳しい状況であったが、政府が大きな方針を示したことで投資チャンスが明確になり、これまでよりも多くの企業が参加してインフラ整備が進むことが期待される。
私が求める政策
最後にEVの普及のために私が個人的に求めたい政策を紹介して、本記事を締める。
- 新築の集合住宅への普通充電器設置を義務付け(半分程度~毎年割合を上げる)
- 既築の集合住宅で希望があれば必ず普通充電器を設置
- 高速道路のSA/PAへの急速充電器の一定数設置を義務付け(1割程度~毎年割合を上げる)
- 公共駐車場への普通充電器設置を義務付け
- 上記に対する補助金
最後までお読みいただきありがとうございました!
日本最速の急速充電器の誕生と、今後のEVの可能性を感じていただけたら嬉しいです!