【日本国内のEV販売】2024年10月のEVシェアは2.2%、印象操作とともに減少が継続

記事公開:2024/11/14

八重さくら

皆さんおはようございます、八重さくらです!
本日は、2022年10月以来の低水準となった2024年10月の国内のEV販売状況を解説します!

※この記事は2024年10月の情報です。最新情報はこちらから:EV販売台数の記事一覧(翌月中旬頃更新)

2024年10月の日本国内の軽自動車を含む乗用車全体の販売台数は337,677台で、前年同月の2023年10月(334,485台)比では+1.0%とほぼ同等に。さらにCOVIDによる影響を受ける前の2019年10月(259,919台)と比べると、29.2%の大幅増加となった。

このうちEV(BEV+PHEV)のシェアは2.2%で、2022年10月以来の低水準に。PHEVは前年の1.2%から0.9%に、BEVは2.0%から1.3%にそれぞれ減少した。メーカー別の台数では前月に続き輸入車の合計が最多となり、国内メーカーとしては日産が首位を維持した。

さらに燃料別シェアの最多となるHVは53.4%で、2024年の年初から安定して過半数を維持。HVを含む電動車全体のシェアは55.6%となった。

日本国内の燃料別販売台数(2024年10月).png
日本国内の燃料別販売台数(2024年9月)(クリックで拡大)

・BEV:4,325台(乗用車全体の 1.28%、前年比 -35.07%)
・PHEV:3,004台(乗用車全体の 0.89%、前年比 -28.10%)
・EV(プラグイン車合計):7,329台(乗用車全体の 2.17%、前年比 -32.38%)

・FCV:52台(乗用車全体の 0.02%、前年比 +243.39%)
・ZEV合計:7,381台(乗用車全体の 2.19%、前年比 -32.00%)

・HV:180,329台(乗用車全体の 53.40%、前年比 +12.80%)
・電動車合計:187,710台(乗用車全体の 55.59%、前年比 +9.95%)

【本ページに掲載している販売数データのソースについて】
・登録車:一般社団法人日本自動車販売協会連合会(JADA)の燃料別販売台数(乗用車)より
・軽自動車:一般社団法人 全国軽自動車協会連合会の軽四輪車通称名別新車販売確報、及びメディア向け資料より
※シェアは上記の販売台数より独自集計
※特筆なき場合、EVはBEV(バッテリー式の完全電気自動車)とPHEV(プラグインハイブリッド車)を両方を指す

販売台数とシェアの推移

2024年10月のEV販売台数は7,329台で、前年の10,839台と比べると引き続き-32.38%と大幅に減少した。一方で2年前の2022年10月の6,309台と比べると16.17%の増加となり、6月から9月まで続いた減少に終止符を打った。

日本国内のEV(BEV+PHEV)販売数.png
日本国内のEV(BEV+PHEV)販売数(クリックで拡大)

同期間のシェアは2.17%で、2022年10月以来の低水準となった。乗用車全体が高水準を維持した一方で、EVだけが減少した形だ。

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日本国内のEV(BEV+PHEV)シェア(クリックで拡大)

月推移では2024年Q2以降は成長傾向が続いていたものの、10月は四半期初月の閑散期もあり、再度減少傾向に。最多を記録した2022年~2023年と比べて減少トレンドが続いており、この傾向は2024年いっぱい続く可能性が高い。

日本国内のEV(BEV+PHEV)販売数 と シェア(月推移).png
日本国内のEV(BEV+PHEV)販売数とシェアの推移(クリックで拡大)

メーカーと車種

メーカー別EV(BEV+PHEV)販売台数(2024年10月).png
メーカー別EV(BEV+PHEV)販売台数(2024年10月)(クリックで拡大)

輸入車の内訳は不明ながら、メーカー別のトップは2,064台を販売した日産と推測される。前年の4,134台からは50.1%の減少で、2023年11月以降12か月連続の減少となったものの、引き続き首位となった。車種別では軽自動車の「日産サクラ」が前年の2,990台から1,448台に、登録車の「日産リーフ」と「日産アリア」の合計は1,144台から616台に減少。前月に続き、いずれもJADAの通称名別順位においてTOP50(50位は634台)にはランクインしなかった。

国内メーカーの2位は1,734台を販売したトヨタで、前年の2,414台からは28.17%減少となり、6か月連続の減少となった。プリウス、ハリアー、RAV4などのPHEVが前年の2,149台から1,612台に、bZ4XやレクサスRZ450e、UX300eなどの登録車BEVが207台から114台にそれぞれ減少。また、このほか公式サイト上で既に生産終了済みとされているC+podが8台販売された。

国内メーカーの3位は823台を販売した三菱で、前年の1,821台からは54.81%の減少で、2023年12月以降11か月連続の減少となった。このうち軽自動車の「三菱eKクロスEV」が前年の231台から184台に、登録車である「アウトランダーPHEV」と「エクリプスクロス」のPHEVモデルの合計は1,590台から639台に減少した。なお、いずれもJADAの通称名別順位のTOP50にはランクインしておらず、車種別の台数は不明だ。

また、輸入車の2,565台のうち、JAIA(日本自動車輸入組合)の「2024年10月度輸入車新規登録台数(速報)」によると普通普通乗用車のOthersは340台(前年の330台から増加)で、ほぼ全数がテスラと思われる。また、電動車専業メーカーのHyundaiは前年の84台から32台に減少、BYDは134台から146台に増加した。

おわりに

今月も国内では世界と逆行し、EVのシェア・台数ともに前年から減少が続いた。直接的な要因は圧倒的なシェアを握る国内メーカーから安価で魅力的な新車種が発売されなかったことだが、一方で自動車メーカーやモータージャーナリストらの印象操作もとどまる所を知らない。

例えばトヨタの自社メディアであるトヨタイムズが公開した動画ではHV、FCV、BEVを比較する動画を公開、効率面ではBEVが最も優れているとして一見すると公平な比較に見える一方、理由なくHVの「ガソリンタンク」とEVの「電池パック」を比較。

ここで重要なのは特定の比較においてどちらが有利・不利なのかではなく、なぜ比較するのかという点だ。例えば効率の違いは維持費や環境負荷に直結するものだが、電池パックが重量やコストで上回ることが、いったいどんな意味をもつのか。

あえてこの比較を肯定するならば重さは効率性に影響するかもしれないが、BEVの方が効率が良いことは動画内でも触れられているし、一部の「タイヤが消耗する」という意見も(テスラなどの一部のパフォーマンスモデルを除き)賛同するオーナーは見たことがない。コストは確かに初期費用の上昇につながるが、こちらの記事の通り長期の保有コストでは高いとは言えないし、動画でも根拠が示されていない。

また、このような印象操作はメーカーにとどまらない。

EVの普及については様々な公的機関やシンクタンクが予想を発表していて、確かに発表もとによってペースが大きく変わってくる。また、確かにノルウェーや中国のように自然な普及に任せず、政治・政策により普及を促進する国や地域もある。

一方で、多くの国や地域では現在の政策から大まかな普及ペースを予想することが可能であり、仮に米国のように大きな政策転換があったとしても、EVの方がより安く、安全で便利な移動手段になれば、その普及を妨げることは難しい。

今後数年以内にEVの方が(既に長期所有コストで安くなっていることに加えて)初期費用でも安くなることは、BloombergNEFなど様々な公的機関やシンクタンクが予想している。

参考:Lithium-Ion Battery Pack Prices Hit Record Low of $139/kWh
参考:Electric Vehicle Outlook 2024

当然ながらこのような予想は必ずあたるというものではないが、予想に一切触れずに「誰も読めない」「税金・補助金・環境規制でしか誘導できない」などと誤ったメッセージを発することが正しいと言えるのだろうか。

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