【数十億円!?】超高額な蓄電池で初期費用が回収できる理由

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皆さんおはようございます、八重さくらです!
今回は世界中で導入が進む大規模な蓄電池がどのように高額な初期費用を回収するのかを徹底解説します!

2017年にテスラのパワーパック(メガパック)を利用してオーストラリアの南オーストラリア州に設置された「ホーンズデールパワーリザーブ(HPR)」と呼ばれる大規模な蓄電設備は、初期費用として投資した約9,600豪ドル(当時の為替レートで約75億円)をわずか2年で回収したという。

※参考:Tesla big battery recoups cost of construction in little over two years(RENEW ECONOMYより)

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ホーンズデールパワーリザーブ全景(公式サイトより)

現在導入が進んでいる産業用蓄電池には大きく分けて2つの使い方がある。

一つはHPRの様に電力網(グリッド)に接続され、電力網全体の耐障害性を高めたり、需要を調整するもの。
もう一つは商業施設や公共施設等などの電力を消費する施設に接続され、その施設だけに対して耐障害性を高めたり、需要を調整するもの。

使い方によって初期費用の回収方法が異なるので、順番にその仕組を紐解いていみよう。

 

 

導入の背景

HPRが設置される前の南オーストラリア州では度々大規模な停電が発生していて、電力網の信頼性向上が急務とされていた。

特に2016年に発生した嵐では送電線の寸断により州全体が停電、その後も猛暑による需要増に対応しきれず停電が発生し、原因として風力発電を中心とした再エネへの高い依存率(2015年時点で43%)が指摘された。

再エネである風力発電は風の強さにより出力が変動し、風が強い場合は損傷を防ぐために発電を停止することから、電力需要に追従するにはこれまで火力発電など他の発電方法と組み合わせる方法が基本とされてきた。

イーロン・マスクCEO率いるエネルギー企業であるテスラがこの状況に対し「100MW/129MWhの大規模蓄電池であるテスラパワーパック(後のメガパック)を導入することで、需給バランスの調整を助け停電の発生を防ぐ」という方法を提案し、南オーストラリア州に採用された。(2019年に150MW/193.5MWhに拡張)

パワーパックで使用されているリチウムイオン電池は出力の変化に強いという特徴があり、例えば同じリチウムイオン電池を利用した電気自動車であるテスラモデルSではアクセル一踏みで瞬時に585kW、たった1台の車で30A契約の一般家庭に換算して約200軒分に相当する電力量を発揮する。

実際に2018年8月に落雷によって電力網に障害が発生した際、過負荷により周波数が下がった事を検知して約0.1秒で電力網へ介入を始め、周波数を正常化できた。

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周波数(緑)低下を検知して即座に応答(黄)する様子(RENEW ECONOMYより)

 

初期費用の回収

HPRでの初期費用の回収について、2つの観点で検証してみよう。

■消費者の収益

オーストラリアでは電力網の信頼性を維持するため、需要に対して供給が不足すると予想された際は「FCAS」と呼ばれる調整システムを稼働させ、周波数の変動を防ぐ。

このシステムは稼働状況に応じて高額な費用がかかるが、HPRがその代わりとなることで稼働回数・稼働時間を抑えることができ、結果的に1年目で4,000万豪ドル(約30億円)、2年目には1.16億豪ドル(約80億円)もの支出を抑える事ができた。

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HPR稼働前後のFCAS費用比較(aureconのレポートより)

この支出は電気を使用する消費者に電気料金として跳ね返ってくるものであり、2年足らずで初期費用を大幅に超える利益を回収できたことになる。

 

■設備運営側の収益

もう一つの観点として、設備の運営元の収益も見てみよう。

冒頭で紹介した記事によると上記の「FCAS」からの収入に加え、時間帯による電力価格の格差を利用した売買電で利益が出ており、こちらも消費者の利益と同様2年足らずで初期費用を上回る事ができている。

追記:

5/18にTESLA RATIに公開された記事によると、オーストラリアのクイーンズランド大学にて導入したテスラのパワーパックによる収益が公開され、HPRの事例と同様FCASで大きな収入が得られたことで事前の予想収入を20%を上回る結果となった。

1.11MW/2.15MWhのシステムの導入費用は200万豪ドル(約1.4億円)で、2020年第1四半期の収益は7.4万豪ドルなので、凡そ7年弱で元が取れる計算となる。

 

 

国内での蓄電池の活用

ここまではオーストラリアの事例をもとに電力網で活用されている大規模な蓄電池の初期費用の回収について見てきたが、国内では商業施設や公共施設、工場などの「電力を消費する施設」での活用が主流で、最近では近鉄がテスラパワーパックを導入した事が記憶に新しい。

これらの施設で初期費用を回収するには主に「ピークシフト」と呼ばれる手法が用いられており、その仕組を理解するには電気料金の決め方を理解する必要がある。

電気料金には「基本料金」と「従量料金」があるが、基本料金については「最も多かった瞬間の消費電力」によって決められていて、一瞬でも使用量が多いタイミングがあるとその分だけ基本料金が値上がりしてしまう。

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基本料金の決め方

消費電力が常に一定であれば問題ないが、上記のように時間帯によっての増減が激しい場合は「最大の消費電力を減らせば基本料金を下げる」ことができ、これを「ピークシフト」と呼ぶ。

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ピークシフトの概念

例えば東京電力の業務用(500kW未満)の場合、2020年5月現在1kWあたり1,716円の基本料金がかかる。
仮に480kW消費する施設であれば基本料金だけで毎月840,840円かかる計算になり、仮にピークシフトにより半分の240kWまで減らせれば毎月420,420円の節約が可能となる。

蓄電池の価格は電池の種類やメーカーによって異なるが、テスラパワーパックの場合は$398/kWhとされているので、仮に260kW/464kWh(パワーパック2台分に相当)の蓄電池を導入した場合$184,672(約1,980万円)となり、およそ4年間で元が取れる計算となる。

リチウムイオン電池の価格は年々下落を続けており、これまで$100/kWh以上とされていたセル価格だが間もなくテスラに採用されるEV向けのセル価格は$60/kWhまで下がるとされている。

当然リチウムイオン電池を用いた産業用蓄電池もそれに倣って下落する見込みであり、今後も蓄電池の導入によるコストメリットは益々大きくなるだろう。

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最後までご覧いただきありがとうございました!
少しでも蓄電池の可能性を感じていただけたら嬉しいです!

 

 

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