三菱アイミーブを乗用から貨物(軽貨物)に改造した記録
皆さんおはようございます、八重さくらです!
今回は電気自動車である三菱アイミーブを軽貨物に改造した記録をお届けします!
※関連記事:三菱アイミーブ M 納車&165kmの旅
上記の記事でもお伝えしたとおり、私の事務所では軽貨物のために2020年7月に中古の三菱アイミーブを購入。
しかしアイミーブは本来「乗用」として作られており、法律上そのままでは軽貨物としては使えない。
軽貨物として使うには車検証に記載された用途を「乗用」から「貨物」に変更し、さらに「自家用」ではなく「事業用」として登録する必要がある。
とはいえ用途の変更には難しい技術は必要なく、しっかり決められた手順さえ踏めば誰でも変更できる。
今回は実際の経験に基づき、三菱アイミーブを軽貨物として使うために改造した記録をお届けする。
もくじ
1. 用途を「貨物」に変更できる条件
1-1. リアゲートの大きさ
1-2. 貨物を乗せる場所の広さ
2. 車両の改造
2-1. 必要な工具
2-2. 後部座席の取り外し
2-3. 軽量化
3. 手続き&検査
3-1. 運輸局への届け出
3-2. 軽自動車検査協会での検査
4. おわりに
4-1.任意保険、貨物賠償責任保険
4-2.かかった費用
1. 用途を「貨物」に変更できる条件
全ての軽乗用車が用途を「乗用」から「貨物」に変更できるわけではなく、車の形にいくつか条件がある。
最終的には軽自動車検査協会の判断となるので直接確認が必要だが、とくに注意が必要な点は以下の2つだ。
1-1. リアゲートの大きさ
1つ目は荷物を載せおろしするためのリアゲート(またはいずれかの貨物用のドア)の大きさで、幅80cm、高さ60cm以上が必要となる。
アイミーブはこの条件をクリアしているが、もし上記の広さを確保できない場合は自分で広げることは困難なので、素直に別の車種への乗り換えを検討しよう。
2-2. 貨物を乗せる場所の広さ
荷物を乗せる場所の広さが0.6㎡以上必要であり、座席よりも荷物を乗せる場所の方が広い必要がある。
特に後者については標準の状態ではアイミーブを含めてほぼ全ての軽乗用車で満たせず、後部座席を取り外して2人乗りに構造変更する必要がある。
2. 車両の改造
今回購入したアイミーブは事前に必要な改造を確認した上で購入しており、後部座席を外せば軽貨物の条件を満たすことがわかっていた。
2-1. 必要な工具
今回使った工具は以下のとおり。
【①六角ソケット&ドライバー】
座席やシートベルトは六角のボルトやネジで固定されており、持っていない場合は六角ソケットとドライバーのセットを買うと色々な用途で活用できるだろう。(1~2番目)
また、座席やシートベルトを固定しているボルトは特に強く締められているので、柄の長いレンチがあると弱い力でも外しやすい。(3番目)
【②内張り剥がし】
クリップなどで固定されている内張りは、このような内張り剥がしがあると簡単に外せる。マイナスドライバーなどで代用する場合は内装を傷つけないよう、先端にテープを巻くと良い。
2-2. 後部座席の取り外し
【①座面の取り外し】
座面の取り外しには工具は不要で、座面の前面にある2つのクリップを引っ張りながら上側に外す。
【②背もたれの取り外し】
背もたれは左右2分割で前後3つずつ、合計6つのボルトで固定されている。
前側はそのまま六角ソケットで取り外し、後側は防音カバーを外してからボルトを取り外す。
ちなみにこの黒い蓋の下にはモーターやインバータが収められているが、だいぶスペースに余裕があるように見えた。もう少し詰めて荷室を広げてほしいところだが、ガソリン車の「アイ」と共通設計なので仕方なし。
ボルトを外したら、右側の背もたれから順番に上に持ち上げて取り外す。
【③シートベルトバックルの取り外し】
シートベルトのバックルは2つのボルトを取り外すせば外れる。
【④シートベルトの取り外し】
シートベルトはまず下側のボルトを取り外す。
次にいくつかの内張りを外す。まずは乗降口の下側のスカッフプレートを、3箇所のクリップを意識しながら上に持ち上げて取り外す。
そして2箇所のクリップを引っ張りながらジャッキが収められている蓋を取り外し・・・
中に入っているジャッキのネジを回して緩め、取り外す。
そしてリアゲートのゴムの一部を引っ張って取り外し・・・
4箇所のクリップを意識しながら、リアゲートの下側のスカッフプレートを上向きに取り外す。
次にCピラー下側の内張りのクリップ2つを取り外し・・・
クリップを意識しながら後側から内張りを浮かせていき・・・
前側にずらし、車体に引っかかっている部分を外す。
次に5つのボルトを外し、ジャッキを固定している金属板を取り外す。
そしてシートベルトの上側の固定具に内張り剥がしを差し込み、カバーを取り外す。
中のボルトを取り外すと固定具が外れる。
最後にネジとボルトを外せば本体が外れる。
管轄の軽自動車検査協会によってはボルト穴を塞いだり、荷台を平らにするなどの条件が加わることがあるが、今回は取り外すだけで検査を通過することができた。
2-3.軽量化
後部座席を取り外すだけでも軽貨物への切り替えは可能だが、より多くの最大積載量を確保するために不要な部品を取り外し、軽量化することが望ましい。
取り外した後の見た目が気になる場合は検査後に戻しても問題ないが、検査後に戻した場合はその分の最大積載量が減ることに注意しよう。
【重量に関する用語について】
- 車両重量:人や荷物を含まない車両のみの重さ
- 車両総重量:人や荷物を含めた車の最大の重さ
- 最大積載量:積載可能な最大の荷物の重さ(乗用車は0kg)
これらの関係を式で表すと、以下のとおりとなる。
車両重量 + (定員 * 55kg) + 最大積載量 = 車両総重量
例えば車両重量1,030kg、定員2人、最大積載量150kgであれば、車両総重量は以下のとおりとなる。
1,030kg + (2人 * 55kg) + 150kg = 1,290kg
【最大積載量の計算について】
車両総重量は車の設計段階で決まっていて通常は増やせないため、検査時に車両重量を測定し、以下のとおり車両総重量の範囲内で最大積載量を計算する。
車両総重量 - (定員 * 55kg) - 検査時に測定した車両重量 = 最大積載量
アイミーブの車両総重量は1,290kg、標準の車両重量は1,070kgなので、例えば定員を2人(110kg)に減らし、さらに軽量化により車両重量を1,030kgまで減らせれば150kgの最大積載量を確保できる。
1,290kg - (2人 * 55kg) - 1,030kg = 150kg
今回は車両重量を元の1,070kgから1,030kgまで40kg分落とすべく、以下のとおり軽量化を行った。
【①フロアマットの取り外し】
助手席、後部座席のフロアマットを取り外す。(運転席以外は固定されておらず、持ち上げるだけで外れる)
【②後部ドア 内張りの取り外し】
後部ドアの内張りを外すには、まず4箇所のネジを取り外す。
次に内張り剥がしで下側のクリップを外しながら浮かし、最後に上に持ち上げて内張りを外す。
外したら裏側に手を入れて2本のロックワイヤーと電線のコネクターを外す。
ロックワイヤーはワイヤーの位置を切り込みに合わせて横にずらし、電線のコネクターは爪を押し込みながら下側に引っ張ると外れる。
【③バックドア内張りの取り外し】
まず上のカバーを固定している2本のネジを外し、カバーを上にずらして外す。
その後10個のクリップを外すと、全体を覆っているカバーが外れる。
※今回は同時にドライブレコーダー用の後部カメラを取り付けた。
【④Cピラー付近の内張りの取り外し】
クリップで止まっているだけなので、リアゲートのゴムを外してから内張り剥がしで外す。
【⑤パンク修理キットの取り外し】
パンク修理キットはカバーに覆われているので、まず4箇所のネジを外してカバーを取り、修理キットを取り外す。
このカバーは金属製で比較的重さがあるため、合わせて隣の同じ形のカバーも外すと良いだろう。
【⑥後部座席用取っ手の取り外し】
ドア上部の天井部分に付いている取っ手は2箇所のネジで止まっており、まず内張り剥がしでカバーを開き、中のネジを外せば取っ手が外れる。
【⑦グローブボックスの取り外し】
グローブボックスは、両サイドの引っかかっている出っ張り部分を内側に押し込みながら手前に引くと外れる。
ガソリン車であれば検査前になるべくガソリンを減らすなどの対応が可能だが、電気自動車はそのような対応はできないため、なるべく多くの不要な部品を外すことで最大積載量を確保できる。
ただし必要な部品まで外さないように注意が必要で、例えば前席のヘッドレストを外してしまうと検査に通らなくなってしまう。(誤って取り外してしまい、再検査する事になったのはここだけの秘密)
3. 手続き&検査
車両の改造が完了したら、運輸局での手続きと軽自動車検査協会での検査を行う。
3-1.運輸局への届け出
運輸局へ届け出が必要な資料は全部で4つあり、以下のとおり記入した上で管轄の運輸局の支局に提出する。
以下の説明は関東運輸局千葉運輸支局での手続き方法で、管轄によって記入項目が若干異なるかもしれないので、管轄の運輸局・支局に確認すること。
【貨物軽自動車運送事業経営届出書】
事業として軽貨物を始めることを運輸局に届け出るための書類で、記載後にコピーして2部用意。
事業用の黒ナンバーを取得するために必要な届け出で、書き方は以下のとおり。
◯届出日
運輸局に届け出る日
◯氏名又は名称並びに代表者の氏名及び住所
- 開始予定日:事業を開始する日
- 氏名又は名称/ふりがな:屋号がある場合は屋号、ない場合は氏名
- 代表者氏名:前項に屋号を記入した場合は氏名
- 住所/電話番号:事務所(自宅)の住所と電話番号
- 押印:コピー後にまとめて押印
◯営業所の名称及び位置
- 営業所名:1箇所のみの場合は「本店」などと記入
- 位置:事業所と同じであれば「住所に同じ」にチェック
◯事業用自動車の種別ごとの数 軽(普通)
- 車両数:1両
- 乗車定員及び最大積載量:乗車定員は2名、最大積載量は空白
◯自動車車庫の位置及び収容能力
- 位置:事業所と同じであれば「住所に同じ」にチェック
- 営業所からの距離:住所と同じ場合は空欄
- 収容能力:車庫の面積
◯乗務員の休憩又は睡眠のための施設の位置及び収容能力
- 位置:事業所と同じであれば「住所に同じ」にチェック
- 収容能力:事務所(自宅)の面積
◯運送約款
通常は「標準貨物軽自動車運送約款」にチェック。
◯運行管理体制を記載した書面
- 所属営業所名:「営業所の名称及び位置」で記載した「営業所名」
- 運行管理の責任者氏名:自分の氏名
◯誓約書
2箇所にチェックを入れ、日付、住所、屋号又は氏名を記入
ここまで記入したらコピーをとり、「氏名又は名称並びに代表者の氏名及び住所」「誓約書」のそれぞれ2箇所、合計4箇所に押印して完成。
【運賃料金設定届出書】
運賃設定を届け出るための書類、記載後にコピーして2部用意。
◯右上の部分
- 日付:届け出日
- 住所:事務所(自宅)の住所
- 氏名又は名称:屋号、ない場合は氏名
- 代表者名:氏名
- 電話番号:事務所(自宅)の電話番号
◯1.氏名又は名称及び住所並びに代表者氏名
- 氏名又は名称:屋号、ない場合は氏名
- 住所:事務所(自宅)の住所
- 代表者名:氏名
◯2.事業の種別
記載不要
◯3.設定した運賃及び料金を適用する地域
「全国」にチェック
◯4.設定した運賃及び料金の種類、額及び適用方法
記載不要
◯5.実施年月日
事業を始める年月日
◯別紙<貨物軽自動車運送事業運賃料金表>
様式に付属している記入例を参考に記入。運賃をAmazonFlexや宅配事業などは先方の言い値や個別契約で運賃が決まるため、その場合は記入例をそのまま記入する。
全て記載したらコピーをとる。
【事業用自動車等連絡書】
事業用の黒ナンバーを取得するために、開業を軽自動車検査協会に通知するための連絡書。
記載後にコピーして2部用意
◯事業等の種別
貨物(軽)に◯印
◯使用者の名称
氏名を記載
◯使用者の住所
事務所(自宅)の住所を記載
◯所属営業所名
貨物軽自動車運送事業経営届出書の営業所名を記載
◯使用の本拠の位置
事務所(自宅)の住所を記載
◯自動車登録番号等(使用しようとする自動車)
- 車台番号:車検証の形式+車台番号
- 自動車の年式:車検証の初度検査年月
- 乗車定員:2人
- 貨物自動車:「種別(軽)」に◯印、最大積載量は空欄
- 事案発生理由:「新規許可」に◯印
全て記載したらコピーをとる。
【車検証のコピー】
変更前の車検証のコピー。
全て記載したら管轄の運輸局の支局に提出する。最寄りの検査登録事務所ではないので注意!
例えば千葉県木更津市の場合は袖ヶ浦検査登録事務所ではなく、千葉市内の関東運輸局 千葉支局となる。
提出したら以下の3つの書類をもらって次のステップへ。
- 「貨物軽自動車運送事業経営届出書」の控え →保管用
- 「運賃料金設定届出書」の控え →保管用
- 「事業用自動車等連絡書」 →軽自動車検査協会に提出
3-2.軽自動車検査協会での検査
軽自動車の用途を「乗用」から「貨物」に変更する場合、軽自動車検査協会にて「構造変更」と呼ばれる検査を行う必要がある。
検査内容は通常の車検での検査内容に加え、車の構造が「貨物」に適することを検査する。
検査が完了したら最大積載量を掲示する必要があるので、事前に以下のようなステッカーを準備しよう。
【①予約】
検査には予約が必要で、軽自動車検査協会の検査予約システムから予約できる。
初めての場合はまず会員登録し、ログインして「予約」の「構造等変更検査」を選択。
そして日付を選び、次に時間帯(08:45-10:00のような枠)を選び、最後に車両情報を入力する。
なお、万が一検査が通らなかった際は当日中なら予約不要で再検査が受けられるので、追加整備などの時間を考えて午前中に予約を入れることをおすすめする。
【②予備検査】
通常の車検と同様の検査を行うため、検査当日の朝に近くの自動車整備店でアライメントや光軸調整などの予備検査をおこなうと確実だ。(数千円程度)
万が一検査に不合格となった場合は調整後に再検査が必要になるが、今回の場合は納車してすぐの検査だったため、特に予備検査はしなかった。
【③書類の記入】
検査の前に幾つかの書類を記入する必要があるため、当日は30分ほど余裕をもって受付を済まそう。
書類には車検証の情報を記載する欄があるが、ここには構造変更前の車検証の情報を記載する。
書類に記入したら受付を済ませ、指定された検査レーンへ。初めて検査を受ける場合は受付時にその旨伝えると初心者マークが渡されるので、ダッシュボードに掲示しよう。
【④検査、積載量の算定、シール張り付け】
検査レーンへ並び、順番が来たら検査を担当するお兄さんお姉さんたちの指示に従い車を操作する。ダッシュボードに初心者マークがあれば丁寧に説明されるので心配は不要だ。
最初に排気ガスの測定を行うが、電気自動車であることを伝えれば通過できる。
通常の車検と同様の検査が完了したら構造変更の検査を行い、ここでリアゲートや荷台の寸法を確認し、計測した重量から最大積載量が計算される。
最後に計算された最大積載量のステッカーを貼り付けて検査完了だ。
【⑤自賠責保険の延長】
検査が完了したら車検証の有効期限が検査日から2年間に延長されるため、車検の満了日に合わせて自賠責保険を延長する必要がある。
軽自動車検査協会内に自賠責保険の代理店があるので、特に保険会社にこだわりが無ければここの窓口で手続を済まそう。
【⑥旧ナンバーの返却&新ナンバー受領】
ここまできたら旧ナンバーを取り外し、返却する。そして新ナンバーを受け取り、車体に取り付ける。
ナンバーの取り外し・取り付けはプラスのドライバーが必要だが、窓口にて貸し出しを行っている。使い終わったら忘れずに窓口まで返却しよう。
ナンバーの取り付けが終わったら全ての手続が完了となり、晴れて軽貨物として仕事が受けられる。
4. おわりに
最後に保険関係と、一連の手続きにかかった費用について振り返ってみよう。
4-1.任意保険、貨物賠償責任保険
【任意保険】
軽貨物への変更が完了したら任意保険を切り替えるが、多くの場合、引き継ぎではなく新規加入となる。
軽貨物は通常の自動車保険よりも割高となり、例えば私の事務所の場合は以下のような条件となった。
- 保険会社:損保ジャパン
- 対人対物:無制限
- 人身傷害:1名につき3,000万円
- 車両保険:100万円・免責20万円(範囲限定)
- 等級:6S(+4%)
- 費用:172,390円(1年目/年払い)
- 月額換算:約14,000円(2年目は約9,500円)
軽貨物の場合は特に1年目はリスクが高いと判断されてしまい、保険料が高くなるそうだ。
【貨物賠償責任保険】
万が一事故などにより貨物が損傷し、賠償責任が生じた場合に代わりに支払われる保険で、荷主によっては必ず加入が必要な場合もある。
任意保険と比べると安価で、私の事務所の場合は以下のような見積りとなった。
- 保険会社:三井住友海上
- 支払限度額:500万円(免責なし)
- 第三者賠償:1,000万円(免責5万円)
- 費用:17,500円(1年間/年払い)
4-2.かかった費用
今回の軽貨物の登録にかかった費用は以下のとおり。(全て税込み)
- 最大積載量ステッカー:450円
- 申請手数料:1,510円
- 自動車重量税:5,000円(事業用・エコカー)※1
- 自賠責保険(期間追加分):約15,000円
※1:エコカーに該当しない場合は5,200円
今回は道具類はすでに持っていたため、合計約2万2千円で自家用軽乗用車から事業用軽貨物に変更することができた。
不慣れな場合は自動車整備店に依頼するのも一つの手だが、少しでも節約したいのであれば自分で挑戦してみてはいかがだろうか。
今回も最後までご覧いただきありがとうございました!
これから軽貨物を初める方に、少しでも参考になったのなら幸いです!
※もし不明点がありましたら下からメッセージをいただければ、可能な限り回答します。
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